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瀬戸市品野町の動物病院。品野ペットクリニックです。

エキノコックスについて

平成30年4月26日付で愛知県より愛知県獣医師会あてにエキノコックス症にかかる注意喚起についての通知がありました。
これから暖かくなりますので、海や山へお出かけになる方も多いと思います。ワンちゃんをお連れになる方も増えておりますので、とても大事な情報としてご覧になってみてください。

犬におけるエキノコックス症の発生について
(愛知県のページです。)


エキノコックス感染症はつくづく嫌な病気です。
厚生労働省のリンクをたどると、こちらのページに人のエキノコックス症について詳細な記載があります
短くまとめるかと思ったのですが、すでに十分短いのでこれまたコピペします。(赤色は私が着色しました)


■ 人のエキノコックス症
・感染経路:虫卵汚染の可能性がある食物・水などを介した糞口感染。
・潜伏期間:
10年前後
・症 状:多包性エキノコックス症で は肝臓の腫大,黄疸。症状が出現してから
診断されるのは,既に高度に進行した場合である。成人で約10年,小児で約5年で悪性腫瘍に似た病態を示 す。主に肝臓に黄白色の病巣をつくる。病巣は周辺臓器にも広がり,肺,脳等にも転移する。感染したまま放置する と90%以上が死に到る
・診断及び検査:居住地など生活歴を参考とし,画像診断(MRI等による石灰化,壊死,微小膿胞等),血清検査,病理組織像で病変を認めて確定。
・治 療:
早期診断により病巣の完全 切除が可能であれば治癒する。アルベンダゾール投与は,切除不能例や切除 後病巣の遺残例に適用されるが効果は不確定である。生体肝移植は,欧州に適応例があるが予後は不良となることが多い。

「人と動物の共通感染症」はペット飼育者にとって身近な危険です。エキノコックス感染症については北海道では「常在する病気」として注意喚起がなされていますが、本州では対岸の火事的な扱いででした。漠然と、広まるならば北の青森から徐々に南下というイメージでした。そんな中、愛知県で平成26年4月4日と平成30年3月27日に診断の届け出がありました。

エキノコックスは犬やキツネを終宿主とする寄生虫です。人やネズミは中間宿主です。
寄生虫の立場から考えるとわかるのですが、犬やキツネとは共生するのですから本体の命を脅かすことはありません。糞と一緒に外界に出ますが、排泄されてすぐに感染力を持ち、さらに20度でも25日、4度では128-256日も生きていることができます。中間宿主であるネズミに入った後は、体内で増殖して、ネズミ本体を弱らせて、犬やキツネに食べてもらいたいわけです。ネズミの代わりに人が感染した場合は厚労省のページにあるような経過をたどるわけです。

エキノコックスは生活環を完成させるために、必ず中間宿主を必要とします。虫卵の入った糞を犬やキツネが食べても感染しません。同様に人間が何かしらの間違いでのネズミを食べても感染しません。犬やキツネから糞を介してネズミや人へ行き、ネズミが捕食されることで犬やキツネに戻るのです。

愛知県で感染した野良犬が見つかったことの恐怖はどこにあるかというと、愛知県で生活していたならば、あちこちで糞をしているはずですので、虫卵がばらまかれているであろうということです。その糞がネズミに入ったならば、生活環が完成しているかもしれません。仮に北海道から感染犬が持ち込まれて、ごく短期間生活していたところを保護されたとしても、1日1回以上は排泄するでしょうから、その分の虫卵はばらまかれていることになります。
仮に半年くらい生活していたとしても、セミナーで紹介された推定計算では
老熟片節中の虫卵数
 1老熟片節中に200から300個 
  約7から10日に1回の割合で離断(産卵と思ってください)
  1日当たり0.08〜0.14片節
キツネ1頭に3000隻(匹と思ってください)の成虫が寄生しているとする
 1日当たり1頭のキツネから排泄される虫卵数は、
  3000×0.08〜0.14×300=72000〜126000個
3000隻の虫卵産生期間 2から3か月(最大6か月)
 生涯総産卵数 72000〜126000×90=6480000〜11340000個/隻

気楽な話ではないことが想像できますよね?
野生動物は水辺に排泄することが多いので、1つの糞の塊ならまだ広がりは少ないといえますが、水流にほぐされて流れていけば計算上は7〜12万個の虫卵が毎日拡散していくわけです。

愛知県衛生研究所では知多半島で捕獲された野犬等の糞便を検査しています。(結果はこちら)結果、現在までエキノコックス虫卵は発見されていません。
北海道でのキタキツネの感染率は40−60%、犬の感染率は1-3%との報告もあるようです。当たり前ですが本州では感染率がどうなるかわかりません。また、エキノコックスは感染後1か月程度で虫卵を排泄し始め、その後2〜4か月で自然に排除されます。糞便中に見つかるのは限られた期間なのです。そういう事情から、「いない」とは言いにくい訳です。くわえてむつかしいのは、感染したネズミをどう見つけ出すかというところで、もうしばらく様子を見ないと何とも言えません。

エキノコックス感染症の恐いところは潜伏期間が長く、進行するまで症状もはっきりせず、治療法もこれで治りますよと言い切れるものがないことにあります。
人の命にかかわる病気ですので、愛知県の注意喚起のうち「3. 予防方法」を下記にコピペしました。

3 予防方法

 エキノコックス症の予防方法としては、野山に出かけ、帰ったときはよく手を洗うことや、犬などとの接触や、虫卵に汚染した可能性のある水、山菜などの摂取を避けることです。

(1) 野山に出かけ、帰ったときはよく手を洗うこと。

(2) 野犬や野生動物にはむやみに触れないこと。触れた場合は、よく手を洗うこと。

(3) 衣服や靴についた泥はよく落とすこと。

(4) 沢や川の生水は飲まないこと。

(5) 山菜や野菜、果物等はよく洗ってから食べること。

(6) 犬の放し飼いをしないこと。犬の糞便は適切に処理すること。


皆さん!気を付けましょうね!

品野ペットクリニック品野ペットクリニック

獣医師     戸田昭博
愛玩動物看護師 戸田美幸

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