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瀬戸市品野町の動物病院。品野ペットクリニックです。

当院で接種しているわんちゃんのワクチンについて

 当院ではMSD アニマルヘルス株式会社の ノビバックDHPPiをコアワクチンとして使用しております。
MSD Animal HealthのHPより
 このワクチンでジステンパー、アデノウイルス2型、パルボ、パラインフルエンザの予防をします。


ワクチン接種後の注意
 ワクチンを接種する日は、できれば1日ワンちゃんと一緒にいられる日の午前中を選択してください。ずっと監視していないといけないわけではありませんが、ワクチンアレルギーが発生する可能性があります。私の経験的には、接種後2〜5時間程度たってから、顔面の腫脹や全身のかゆみとなって現れることが多いです。夕方に注射をして、外食に出かけて帰ってきたら大変な事態になってましたというのは、ワンちゃんにとっていいことではありません。
 病気に対する防御をしておくことは大事ですが、安全のために平日の午前中に接種することをお勧めしております。


ワクチン接種の間隔について

 最近、ワクチン接種の間隔に関するご質問をいただくことが多くなりました。最も多いのは「3年に1回でいいって聞いたけど?どう?」というものです。当院の方針もご説明してみます。
※あくまで当院での考え方ですので、かかりつけの先生にご確認になってくださいね。

 まず、基本となる論文・報告書をご紹介します。

@WSAVA 犬と猫のワクチネーションガイドライン (日本語版) 
A犬コアワクチン接種後の経過年数による抗体保有状況の推移
   相馬ら 日本獣医師会雑誌 69 538-541 2016
Bワクチン製造各社の資料

 @の資料は2007年に出たものの改訂版なのですが、いろんな人がお読みになってご紹介なさってますね。これに合わせるように、メーカーによってはBの資料の中で有効性の持続期間を36か月確認したと書いてあるものもあります。ちなみに、ノビバックDHPPiでは下記のように書いてあります。
CPiVでは少なくとも12か月以上、CPV、CDV及びCAV-2では36か月以上抗体持続が確認されました。
 そこで微妙になるのですが、例えば、以前当院で採用していたメリアル社のユーリカンではそのような記載はありませんでした。20年ほど前の発売当時は12か月は効果が持続することを確認していれば認可が下り、1年ごとに接種しましょうとすることで問題がなかったということです。(メーカーにこれから先に添付書の改定があるか確認してみたのですが、改定の動きはないらしいということでした。)

 現状の情報からいった場合、コアワクチン接種プログラムは下記のようになります。
1:6-8週で1回目
2:10-12週で2回目
3:14-16週で3回目
4:血液検査で抗体価の上昇を確認する
  上昇しているならオッケー
  上昇していないなら再接種
   再度検査で確認
    上昇しているならオッケー
    上昇していないならノンレスポンダーなので、ワクチン接種と
    いう手段では感染防御できない
  ※抗体価の上昇を妨げるほかの要素として健康状態や寄生虫感染も
   ありますので、一概に言い切れることではありません。
5:1年後に再接種
6:3年ごとに再接種

これを遂行していくうえで問題となるのは、
・アレルギー反応
・ノン(またはロー)レスポンダー
    (ワクチンの効果が出ないまたは低い子)
・移行抗体の影響(ワクチンによる抗体価が上がらない)
・子犬の社会化時期をどう考えるか
などで、クリアするために個別のプログラムを考えるわけです。

仔犬の時のワクチンの接種回数についての考え方
 
ワクチンの接種回数は必要性と最終回をいつにするか?の設定によって決まります。
 ワクチンの接種し始めはいつからがいいんでしょう?ワクチンの効果(抗体価の上昇)を妨げる要素に母犬からの移行抗体があり、8〜12週齢くらいまで持続するとされています。母犬の初乳を十分に飲めなかったケースなど、移行抗体が少ないと思われるケースに対する安全策としてノビバックDHPPiは
4週齢から接種できます。ただ、あまりに小さな子にワクチンを接種して副反応が出ると困ります。体格が小さすぎて、緊急時対応がむつかしいのです。しかし、早期に移行抗体がなくなる子もいると思われます。そこで、せめて6〜8週齢程度、ある程度の体格になるまでは待って、そこから開始しております。(犬猫等販売業者の遵守基準として、生後56日を経過しない犬猫の販売は禁止されています。なので、一般の飼い主の方は繁殖させてない限り8週齢以前の子にワクチンをする機会がありません。)
 新しいガイドラインでは、12週齢を超えても移行抗体がしっかりある子がいるということが確認されたために、
従来12〜14週齢で最終とされていた推奨プログラムが「16週齢以降」まで後ろにずれました。必要に応じて接種を開始して、3〜4週間隔で16週齢を超えている時点で最後の接種をするということになります。
 ここで、ワクチンの承認時に行なわれた実験結果もチェックします。添付書には「4週齢以上の犬に3〜4週間隔で2回注射する」とあります。資料を確認すると2回の接種で抗体価がぐっと上がることが示されています。
 
また、16週齢を超えている子にはじめて接種する場合は1回の接種で十分な効果が得られるとガイドラインでは示されています。メーカーに確認すると、抗体価の上昇を確実にするためにはブースター効果(2回接種することで確実に抗体価を上げることです。)も期待して2回接種する方が望ましいとのことでした。
 
現時点での当院の方針
 メーカーの説明と添付書、これまでの経験に学術的なことを組み合わせて考えることになります。

 
そこで、当院では8週齢(2か月齢くらい)で最初のワクチン、3〜4週間おいて2回目。以上で初年度は終了としています。もちろん、こういった資料がありますので、16週齢を超えるまでの追加接種をご希望の場合には接種しますし、ショップ等の保証に絡んで指定がある場合にはそれに合わせて接種します16週齢を超えた子で初めて接種する場合も3〜4週間隔で2回接種します。レプトスピラ入りの場合は12週齢以上の子に接種開始して、3〜4週間隔で2回です。)
 そして、
初年度の最後のワクチンから1年ごとに追加接種をしております。抗体価についての日本国内のデータがまとまってきて、3年おいてもいいということになったら変更します。

抗体価の確認について
 本来、ワクチンは効果をみて判断すべきですから、原則論としてはこれが一番大事です。抗体価が高ければ接種しなくていいですし、低いものを選択的に接種できるならそれを選ぶべきです。残念ながら接種しても十分な効果が発揮できない子(ノンレスポンダー)もいるのです。その子に毎年接種してもあまり意味がありませんから、抗体価をチェックしてやめてしまうのも一考です。
 これまでは、接種後の抗体価上昇の確認手段は、
a: 外部検査機関に依頼する
b: メーカーのラボに依頼して抗体価を測定していただく。
のどちらかでした。
 ワクチンメーカーがいくつもあるのと合わせて、抗体価の測定はそれぞれのメーカーのラボがそれぞれのワクチン株を用いて測定するのが一番正しいです。また、抗体価の数値の評価についても各検査会社、各メーカーが論文や試験の結果から導いており、一律どうですってものはないようです。
 初年度ワクチンの完結にこの測定を行うのがおすすめなのですが、測定に費用が結構かかるのです。。。。。。おすすめのb案は、アレルギー発生時には無料で行っていただいてたのですが、1回数万円必要です。お願いすればいつでもやってくれるというものではありません。
現実的にはa案の検査会社を利用する方法で、数千円で済みますが、けして安くはありません。
 抗体価の測定は、ワクチンプログラムの5と6の間をどう決めるかにも関係してきます。3年ごとのワクチン接種を推奨するために毎年測定をしていますという先生もいらっしゃれば、測定してないけど3年ごとという先生もいらっしゃるようです。最初にご紹介した論文を見れば、
1年後でもある程度の頭数で抗体価は下がっているのです。(抗体価測定を依頼する検査会社の先生が行った調査なので信用度はとても高いです。)注目すべきはむしろ、接種後11ヶ月未満のカテゴリでも不十分な子がいることかもしれません。また、当然ですが、「いつ抗体価が下がるか」はわかりません。接種の1年後で抗体価があったとしても、1年1か月で下がってるかもしれません。その場合は次の測定までの11ヶ月間は「不十分」状態です。
 当院での経験としては、抗体価チェックのハードルはかなり高いです。一般的にノンレスポンダーはごく少数なのでというところを信じて測定しなくてもよしとするか、やってもらえるなら費用がかなりかかるけどきっちり測るか、検査会社で一応これなら大丈夫って検査手技でやってもらって少し費用を抑えるかですけれど、単にワクチン接種するより高くなったあげく、抗体価が低いものがあったらワクチンを接種してまたチェックです。。。学術的にはそれが正しいのですが、実際としてはかなりハードルが高い話です。
 2017年から病院内で抗体価が「陽性か陰性か」を判定するキット(数値ではなく色調で判定します。)が出ました。それを使って迅速かつ検査会社に依頼するよりも安価にチェックすることもできますが、このサイトの動画を見れば、特に理科系の人は結構ビックリするでしょう。(サイトを開くのにちょっと時間がかかります。)

 

現在、我々の用いる検査系というのは、検査者の技術レベルの違いによる数値の変化を抑えるために、極力人の手を使わないで機械で全部やるというのが一般的です。25年前の僕の学生時代さながらのアナログチックなキットです。価格を考えればしょうがないかもしれませんが、う〜〜〜んと思ってしまう動画です。

現時点での当院での結論
 とりあえず
従来通り毎年ワクチン接種を行っております。一番堅いのは抗体価チェックをして判断することですが、そこはご相談で決めて、実施した結果に合わせて接種間隔を広げます。もう少し様子を見て、3年に1回でもいいという話で落ち着きそうならそれに従って変更します。

品野ペットクリニック品野ペットクリニック

獣医師     戸田昭博
愛玩動物看護師 戸田美幸

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