・ペット飼育に慣れてますか?経験は? 今どき、いろんな動物がペットショップで売られています。 初心者には飼育がむつかしい動物でも、お金を出せば買えるというのは昔から変わりませんが、ハードルはすごく下がってしまった感があります。 「わあ!かわいい!」で、手が出せちゃうくらいの金額になってしまってます。 出初めのころは、ジャンガリアンハムスターだって1万円したとか、3万円だったなんて話もありました。ブルーサファイアだってはやりましたよね?僕が初めて買ったときは1頭8000円したかな?ウサギも純血種ならそこそこしますが、「ミニウサギ」になるといきなり3000円で買えちゃったりします。それでもまだスタンダードなペット動物ならいいと思うんですが、最近妙に人気なフクロモモンガや、ハリネズミなど、初心者があまり手を出すべきでないペットが簡単に入手できちゃってます。これらは初心者が「楽しめる」動物種ではなく、「慣れ」が必要です。「慣れって何よ?」って話になるんですが、飼育管理や体調管理のいろはとそれにかかるコストがイメージできるのかってところだと思います。 ペット飼育は経験がすべてです。飼いやすい動物種で経験を積んでから、「ワンランクアップ」はよくわかる話なのですが、そうでないケースは、飼育の話が伝わらないことも多いです。まずは代表的な動物種から始めましょう! ・代表的な動物種って何? 一般的なご家庭を想定してざっと挙げれば、 犬(体重5から10㎏)・猫・セキセイインコ・ブンチョウ・ジュウシマツ・ウサギ・モルモット・ハムスター です。飼育場所に余裕があればここにニワトリとアヒルを加えてもいいと思います。 ・これらの動物種をお勧めする理由は? いろんな視点で理由を挙げられます。 ①動物としての特性:ここに挙げた種はみんな薄明薄暮性といって、朝早い時間と夕方の時間に活発に動くことを基本としている種なので、一般的な家庭での飼育に適しています。 例えば夜勤が多いとか、お勤めの時間帯が結構変わる一人暮らしの方に無難なのはハムスターやモルモットです。夜でも起きてきて遊んでくれます。逆に、寝てるのを起こして遊ぶ!っていうのは向きませんが、よく寝てるのを眺めてるだけも癒されます。 ②寿命がそこそこ短い ハムスターはジャンガリアンなら2,3年で、ゴールデンで5年くらいでしょうか。ウサギなら5年から7年くらい。ここに挙げた小鳥は8年から10年が目安です。犬猫は13年から15年です。 「初めてペットを飼う」という、意気込みのある方がどなたかによりますが、お子さんならジャンガリアンハムスターが一番おすすめです。万が一、実は向いてなくてあきちゃったなんてことがあっても、親御さんの負担は2~3年です。小鳥がいいならそれもokですね。なぜかというと飼育管理の手間とコストがそれほど高くつかないからです。ご家族も大好きでということならいいんですが、そうでもない場合でもそこそこ付き合える動物種でないと、動物がかわいそうです。 ③家の中のある程度のスペースで完結できる この意味では犬、アヒル、ニワトリはダメです。それ以外の動物なら、家の中だけで生涯を全うできます。 ④特殊な設備を必要とすることが少ない 例えば常時20度を切らないようにしなきゃいけないとか、通販で特殊な飼料を買わなきゃいけないとか、特殊なケージを必要とするとか、そういう手間や費用がかかりません。 ⑤多くの動物病院で診療を受けることができる。 ここに挙げた種については、大なり小なりブームをまきおこした後のスタンダードな種ですから、診療のノウハウが蓄積されています。 一般的に犬猫の診療をしていない動物病院は少ないですよね。小鳥や小動物に関してもずいぶん進歩し、動物病院を選ぶこともできる時代になってきていると思います。 昔なら小鳥を診察する獣医師は少なかったと思います。僕が学生だった頃にはじめてみた小鳥の薬用量マニュアルなんてB5用紙1枚で紹介されてました。その後、いろんな教科書や記事が出て、いろんな症状の意味が分かるようになり、それに対して用いることができるの薬品の情報が増えてきました。どんどん発展してるからと言って、犬や猫のようにはいきませんが、それでも「何かできること」は確実に増えています。 ・誰が世話をするの? ここが一番大事です。お子さんが飼育を始めるというならば、親御さんも世話をすることになるというのは覚悟してください。 動物病院にかかるときに、「この子は娘の子やで全然わからんけど。。」なんてことがたまにあります。普段の状況が不明なうえに、慣れてない人と一緒にご来院になったときは緊張しているので、症状が隠れてしまいます。 最近の悩みとして、お子さんがご希望になってわんちゃんを飼育してみたんだけど、実は犬アレルギーであることがわかって大変なことになってますなんてケースがあります。もしかしてうちの子にもあり得る??と思われるフシがあるなら、ハムスターやセキセイインコで様子を見た方がいいと思います。たとえば敷き藁やご飯のほこり、ふけなど、動物飼育に付随して発生する汚れによってアレルギー体質が発覚することがあります。 これまた最近の傾向として、トリマーによるトリミングを必要とする犬種をご購入になる方が増えています。でもちょっと待ってくださいね。プードルやシーズーなど、定期的にきちんとトリミングしないといけない場合は、一生それができるだけの時間と予算が必要です。「お孫さんのご希望だったから奮発して購入したけど、散歩もせんしシャンプーやカットなんかまったく。。。。。」で、毛玉だらけの上に皮膚病でご来院になるケースもあります。そうなってしまった子の多くは、毛玉に引っ張られることで常時皮膚が刺激されて痛みを伴っているために、とても機嫌が悪いのです。なので、最初の処置で毛刈り、最悪は丸坊主ってことがあります。そうなるとちょっとカッコ悪くなってしまいますよ?加えて小型犬は心臓の老化(病気)の症状が早くから出ることが多く、その分の予算もかかります。飼育の労力だけでなくメンテナンスに費用が掛かりますから、お子さんの小遣いではむつかしくなりますのでご注意くださいね。 いろいろと注意事項がありますが、そういうのを乗り越えると、ペットとの楽しい生活が送れると思います。でも、特殊な動物飼育の経験談がインターネットやテレビ番組でご披露されているからか、初心者には不向きなペットを購入される方が後を絶ちません。行き詰まっても獣医さんに聞けば何とかなるなんてことはありません。慎重にスタートしましょうね。 |
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獣医師 戸田昭博
愛玩動物看護師 戸田美幸