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瀬戸市品野町の動物病院、品野ペットクリニックです。

フィラリア症の予防に関して

6月の上旬から12月の上旬は「フィラリア症予防」月間です。

フィラリアは心臓に寄生して、様々な障害をもたらす寄生虫です。
予防薬を毎月1回投与して、しっかり予防しましょう。

内服薬は、感染が成立してから1ヵ月後に飲ませるのが正しい服用です。これは、薬の効果とフィラリアという寄生虫がどうやって成長していくかということにも関わります。
日本全薬工業のサイトより引用。

この薬はL4という段階に効く薬なので、「感染が成立してから」1ヵ月後に飲むのが効果的なのです。よくある誤解なのですが、「フィラリアの感染そのものを防ぐ」わけではないのです。
そこをおさえようと思うなら、蚊が来ない標高の地域や寒い地域で生活するしかありません。
「蚊取り線香たいてます!」というのはあまりあてにはできません。われわれも蚊取り線香や虫除けをしていても蚊には刺されますよね?なので、フィラリアそのものが体に入ってくるのを予防することはできませんから、月に1回、入ってしまったフィラリアを全滅させるということで、「フィラリア症にならないように予防する」わけです。

また、フィラリアには感染可能な期間というのがあります。一定の温度が続かないと、蚊の中のフィラリア幼虫が成熟しないのです。
わかりやすい参考サイトに物産アニマルヘルス株式会社さんのサイトがあります。

愛知県名古屋観測所のデータで見ると下記のようになります。

    2023年 5月7日から11月2日
    2022年 5月5日から11月10日
    2021年 5月14日から11月6日
    2020年 5月17日から10月31日
    2019年 5月15日から11月8日
    2018年 5月3日から11月4日
    2017年 5月14日から10月30日
    2016年 5月8日から11月4日
    2015年 5月8日から11月2日

よって、当院では6月10日から12月10日まで、毎月10日に内服していただいております。当院で前年度の予防を処方し、きちんと内服できた方では、次年度の検査で陽性判定が出たわんちゃんはゼロです。なので、とてもいい結果が出ている予防法だと思います。

当院で処方しているお薬は
ノバルティスさんのミルベマイシンA 普通の錠剤です。
日本全薬工業さんのカルドメックチュアブルP(牛肉のジャーキータイプ)とネクスガードスペクトラ(下記)です。
Meiji Seika ファルマ株式会社さんのパナメクチンチュアブル 鶏肉のジャーキータイプです。
(2023.1 販売終了となりました。)
フジタ製薬さんのミルベマイシン錠 国産牛肉のジャーキータイプで、小ぶりです。
の4種類です。


ネクスガードスペクトラが好評です。

ネクスガードスペクトラは、嗜好性の高いソフトチュアブルタイプの犬のノミ・マダニ駆除薬ネクスガード(有効成分:アフォキソラネル)に犬糸状虫症予防薬の有効成分であるミルベマイシンオキシムを配合し、犬糸状虫症の予防、さらに犬回虫、犬小回虫、犬鉤虫及び犬鞭虫を駆除します。(メーカーページより)

カルドメックチュアブル、ネクスガードも共にワンちゃんたちに好評ですので、嗜好性について特に問題は無いだろうと思いますが、こればっかりは食べさせてみないとわかりません。

当院の会計で試算してみると、カルドメックチュアブルとネクスガード、カルドメックチュアブルとフロントラインプラスという組み合わせでフィラリア予防(+内部寄生虫駆除)とノミダニ予防をするよりは安価となりました。体重が大きい子ほど価格差は大きくなる傾向です。

ノミダニについては不思議なもので、みんなと同じ散歩コースでも、ついちゃう子はついちゃう、つかない子はつかないというのがあります。ついちゃう子はそれはもう悲惨なことになってご来院になりますが、逆に、ノミダニ予防なんてやったことがないなんて子だっていらっしゃいます。
診察でよくお話していますが、当院ではワンちゃんにノミがつくことはあまりなく、ほとんどがダニです。ダニまみれになってるワンちゃんの毛を掻き分けてフロントラインをたらすのは結構大変なので、ネクスガードとネクスガードスペクトラは人気です。フロントラインはノミならば2ヶ月効果が持続しますが、ダニは1ヶ月で、効果の持続期間は同じなのです。ならば簡単なほうってことですね。ぱくっと食べちゃっておしまいです。

品野はそもそも田舎なのですが、その中でも岩巣山が散歩コースです!とか、岩屋堂が大好きで!とか、東海自然歩道を歩くんです!というかたは、ダニがいて当たり前のエリアに入っていくわけですからやっておいてもいいかもしれませんね。年中予防し続けるというのは、その期間、寄生虫駆除やノミダニ予防について気にしないでいられることがメリットです。


プロハート12について
2012年に登場した、プロハート12という、1回の注射で1年間効果が持続する薬があります。



こちらについては当院では採用しておりません。
理由としては、農林水産省の動物医薬品検査所の動物用医薬品等副作用データベースがあげられます。
大前提としては、「どのような薬品でも体に合わないことはありえる」ということがあります。そこを踏まえて、以下の話となります。
プロハート12は発売以来、多くの先生方が導入しており、副反応症例は少ないという印象です。
メーカーに確認したところ、副反応として、アレルギー様症状が出た場合も、回復後はフィラリア予防効果は持続するそうです。
1回の注射で12ヶ月間効果が持続しますから、注射のあとはやることがありません。
内服の場合は、下痢で吸収されなかったり、裏に行って嘔吐してしまったりと、不安要素がないわけではありませんので、注射薬はそこが頼もしいところです。

ただし、難しいなと思うのは、フィラリア症予防は、老若男女、持病のあるなし問わず行うべきですが、この注射の適用にはいろんな制約事項があります。特にむつかしいのは「健康状態及び体質等を考慮し、投与適否の判断を慎重に行うこと。」とあることです。注射を受けることができた子は一般的な病院での外観や一般血液検査、レントゲン検査等をおこなって、注射時にで異常を認めなかった子ということになります。
元気な子にほかにも選択肢がある中であえて注射を受けさせて副反応に出くわす可能性があるけれど、処置前に費用をかけて検査した中に異常はなかったのだからそれらは運不運の話としてしか処理できないということです。しかも、副作用かも知れない状況の発現タイミングは、報告を見る限り注射直後ではないことが多いようです。時間を置いて発生しているので因果関係は不明である、さらに、その間にほかの注射等があった場合はさらに因果関係不明であるという報告が目に付きます。12か月間効果が持続していることをお忘れのないようにしてください。ほかの薬物の使用との相性がいいとは限りません。忘れたころに因果関係不明が発生するのです。
イベルメクチンやミルベマイシンで「絶対」異常がおこらないかというと、そうではありませんが、プロハートと比べると投与件数がケタ違いにもかかわらず、まず副反応の話を聞くことがありません。
また、副反応がでるとすれば、内服ですからまずは下痢や嘔吐、ほかにはのどや腸管での閉塞、アナフィラキシーのような症状が出るかもしれないですが、それも当日や翌日といった、投与後早い時期に発生しますので、因果関係はわかりやすいといえます。
閉塞については、おやつやドッグフードでもありえますから、薬が危険ということにはならないと思います。
また、この薬品は、使用を開始したら(調剤したら)8週間以内に使う薬であるというところが問題です。ほとんどご希望がない中で1本の薬で200kg分あるので、10kgのワンちゃん20頭に注射しないといけません。3kgから5kgくらいの子が多くなっておりますので、もっと多くのワンちゃんに注射しないと消費できないということです。となると、いつでも誰にでも注射できる薬品ならいいんですが、注射のタイミングにも、注射をしてはいけない子の規定にも、たくさんの注意事項があって、当院ではまず消費できないと思われます。

こういったメリット・デメリットが考えられる中、当院では前年度に当院で処方を受けたワンちゃんの次年度の検査で陽性判定はゼロです。月に1回の内服はできないことではないということだと思いますので、御要望がない限り、導入することはまだないと思います。



レボリューションについて



背中に滴下することでフィラリア症予防ができる薬です。ノミや回虫駆除もできますし、以前は結構大変だったミミダニ駆除については当院では第一選択です。
発売開始時のセミナーでは、これからはフィラリア症予防の主流になるかな?とさえ思いました。しかし、滴下薬にも弱点がありました。
フロントライン(ノミダニ駆除薬)でもそうですが、滴下後に「ぶるぶる!ってふきとばしちゃうんですよ〜〜〜ははは!」というご感想を時々伺います。それだと意味がなくなるとはいいませんが、適切ではなくなります。ノミやダニなら、失敗しちゃったなら、やり直しでいいと思いますが、フィラリア症予防はそうは行きません。翌年の検査で陽性判定が出る可能性があるということですよね。
なので、チュアブル製剤を喜んで食べてくれる中、あえて滴下剤を選択されるケースはほとんどないのが当院の現状です。
※ネコちゃんのフィラリア症予防については、定期的に内服させるのは大変ですから、注意点をご確認いただいて処方しております。

品野ペットクリニック品野ペットクリニック

獣医師     戸田昭博
愛玩動物看護師 戸田美幸

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